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Moiz's journal

プログラミングやFPGAなどの技術系の趣味に関するブログです

評価損

 交通事故が起きると、たとえ怪我人等がでなかったとしても、大きな損害が発生する。
これらの被害のうち車の故障分については任意保険によって費用がまかなわれ修理されるのが通常の手続きだろう。しかし、車というものは故障箇所が直ったらそれですべてもとどおりというものではない。
 街の中古車屋のパンフレットなどを見ていると「事故歴車はあつかっておりません」などという言葉を目にする。取り扱いなし、までいかずとも、事故歴のある車は安く買いたたかれるというのは常識であり、事故後修復した車はあきらかに交換価値が下がっているのだ。つまり、機能的に完全に修復されていたとしても、被害者には経済的損害(財産価値の減少)が残ってしまう。いわゆる「評価損」や「格落ち」といわれるものだ。
 では、その分の損害を保険会社に請求したら補償してもらえるのか、というとそう簡単ではない。大概の保険会社は次のような説明をするようだ。「中古価格が下がるといっても、別に今売ろうとしていたわけではないでしょう?それに、ずっとその車に乗り続ければ下取りに出したときの値段の差は、だんだん小さくなっていくでしょう?下取り価格が下がるといっても、今損害があるわけではないんですよ。」
 しかし、今現在損害が顕在化していないからといって補償しないというのも無茶な話だ。いつ売るかどうかなどというのは持ち主の自由で、加害者や保険会社の知ったことではない。実際に所有物の価値を減少させられたのだから請求するのが当然だろう。
 「裁判例・学説にみる交通事故物的損害 第2集−3 評価損(格落ち)(海道野守著、保険毎日)*1」には、実際に裁判で評価損が争われた例が数多く集められてる。それによると、多くのケース(約2/3)で評価損は認められており、額としては修理費用の3割程度のケースが多いようだ。実際に判例を見てみると、上記のような「経済的損失が顕在化していないから損害はない」というような説は、多くの裁判で否定されている。また評価損が認められなかったケースは、法外な損害賠償を求めていたり、軽微な事故であったりする場合が多いようだ。さらにこの本によると、購入後数年を経た車に対して評価損を認めたケースや、被害者側に過失があっても認められたケース、さらに修理前の段階で評価損を認めたケースさえあるそうだ。
 つまり、裁判では多くのケースで「評価損認めるべし」ということになっているのだ。

 さて、保険会社が評価損を出し渋るのは営利企業である以上仕方が無いことなのかもしれないが、第3者が司法上の判断を無視して評価損を否定にかかるとしたら、これはどう考えればよいのだろう。
 次のURLはJAFのホームページ内で見つけたものだ。
http://www.jaf.or.jp/qa/answer/insur/insur19.htm
 これによると、評価損は「心情的なもの」で、「認められるケースはほとんどなく」、「裁判でも否定されている」、「被害者に過失があるとほとんど認められない」、ということになっている。全部正しくない。
 特に判例を引いてきた部分は、かなり悪質だ。わざわざ10年以上前(平成元年)の、かなり例外的な判決を持ち出してきて、これをもって「評価損は裁判でも否定されている」という結論を導き出している。しかし、実際には評価損にまつわる裁判はこの判決の後でも何十件も行われており、多くのケースでこれとは逆の判決(評価損を認める)が出されている。
 なぜこのような古くさくて特殊な判例を持ち出してまで、評価損を否定にかかるのか。裏に何らかの意図を感じてしまうのは私だけだろうか。