Moiz's journal

プログラミングやFPGAなどの技術系の趣味に関するブログです

米国での転職

この項を書くにあたって


事情があって、昨年から今年頭にかけて転職をした。
米国で、現地企業から別の現地企業への転職(ちなみにどちらも半導体業界)と言うことでいろいろあった上に、考えてみれば自分自身初めての転職だった。そういうわけで、いろいろ良いこと悪いこと(悪いことは意外な程少なかったが)含めて初めての体験が多かったので、記憶が鮮明なうちにまとめておこうと思う。(ただし、個人や特定の団体に関わる部分はぼかして書くことにする)

転職活動

いろいろあって転職することになったのは昨年11月末。転職先が完全に決まったのは1月。実際に働き始めたのは3月だが、実質2ヶ月の短い活動だった。同時期に転職活動をしていた人の中には、一月後には別の会社で働いていたという人も珍しくない。このあたり、やはり転職が日常茶飯事のアメリカ企業という感じがする。
実際転職先を探すときに、私が頼った方法は3つ。まず一つ目は定番のコネ。昔の同僚に誘ってもらう、つてを通して探してもらう、逆に知り合いを通して求人情報が伝わってくる、という感じだ。これは上手くはまれば、あっという間に決まってしまう。私の知り合いでも短期間で転職に成功した人たちは大概これのようだ。私自身も知人のコネで何社か面接を受けた。
もう一つは、自分から働きかける方法。昔なら電話で自分を売り込んで郵便で履歴書を送るところなのだろうが、今のご時世ハイテク企業で求人を出している会社はどこもWEBで求人内容を公開している。大きな会社ならば、サインアップしおけば、履歴書を登録しておけたり、条件にあった求人が出たときにメールアラートを送ってくれるようなサービスをしているところも多い。たとえばアップルの求人サイトはここ。(ちなみに、私の転職先ではありません)
http://www.apple.com/jobs/us/index.html
条件的には厳しくなるが、日本等の海外からの登録ができる所も多いし、うまく進んでいざ採用となれば会社がビザの発給を援助してくれるのも普通なので、もし米国での就職を希望している人がいたら、ダメ元で登録しておくというのも手だと思う。(もちろんビザが降りるかどうかは米政府しだいだし、実際にどう行動するかは各人次第なので、どんな結果になっても責任はもてないが...。)他にも条件を入力すると求人情報を検索してくれるWEBサイトが多数ある。たとえばこんなところ。
http://www.monster.com/
さて、最後が人事コンサルタントや採用担当者から声をかけられるというものだが、これが意外と件数がある。ただし、想像するような華やかなものではない。どうもこういう職種の方も成功報酬でやっているらしく、企業の求人と転職希望者とのマッチングの数をこなしているようだ。だから、誘いの声がかかっても「ヘッドハンターから声がかかった、これからは高収入でエグゼクティブの仲間入りだ!」とか早合点するとがっかりすることになる。よっぽどの人材でもなければ、声がかかった後は履歴書を送って電話面接のアポイントをとり...、という通常のコースをとることになるし、給料も相場通りだ。といっても、こうやって声をかけてもらえると言うことは少なくとも自分の経歴やスキルと求人のマッチングはとれているということだし、間の面倒なステップも肩代わりしてもらえるので楽だし、と良い面もある。では、どうすれば声をかけてもらえるかというと、やはりこれがLinkedInになる。とりあえず、米国で転職しようと思っているのならLinkedInのプロフィールは完成させて、設定で転職の問い合わせを「受ける」にしておこう。(Settings -> Communications -> Select the types of messages you're willing to receive -> Career opportunitiesにチェック)。もちろんアカウントがなければ作っておこう。条件さえ合えば、問い合わせがじゃんじゃん来るかもしれない。もし来なくても、それはたんに巡り合わせがわるいだけなので、気にしないでおこう。

面接

こういった方法で転職活動を行っていると、中には結構良い反応が返ってくる物もでてくる。こうなると、次の本格的な段階に入る。流れとしてはこういった感じ。

  1. 電話またはメールによる問い合わせ、やりとり。履歴書の送付
  2. 人事担当者との電話インタビュー
  3. 採用担当者らとの電話インタビュー
  4. 実際に顔を合わせてのインタビュー
  5. オファーの提示と条件交渉
  6. 転職完了

まず、1は書いてあるまま。2は、はっきりいって候補者の絞り込み。求人と応募者の能力・希望がマッチしているかどうかを確認する。電話する相手も人事担当者などのケースが多く、仕事の内容の細かい話はあまりできないこともしばしば。余談だが、一度電話インタビューの案内のメールで題名が Filtering interview と書かれたままのものが送られてきたことがあり、笑ってしまった。
3の採用担当者らとの電話インタビューでやっと本格的に仕事の話に入る。採用担当者はHiring Mangerと呼ばれ、彼・彼女が採用の決定を行う。電話インタービューは複数との間で行われることが多く、大概この時点ではだれがHiring Managerかわからない事が多い。話す内容は、これまでの仕事の経歴、能力、次の仕事の内容、など。場合によってはクイズのようなものを出されることもある。このあたり小賢しいテクニックもあるようだが、私は合わないところに入社してもしょうがないかと思って、おおむね正直に答え、できる限り他の方面からフォローした。
この電話インタビューをクリアすると、晴れて4.の対面での面接に挑むことになる。ここまで来ると会社の方も、交通手段やホテルを用意したり、担当者を一日拘束したりするので、かなり本気になる。もちろん同時に複数の候補者の選別にあたっているのが普通なので安心はできないが、それでも最終行程に入ったのは間違いない。これまでのプロセスは、このインタビューの機会を掴むための準備なのだ。
服装に関しては、私はスーツを着ていったが、ハイテク企業であればもう少しカジュアルな格好が普通のようだ。よく聞くアドバイスは、面接の相手よりも極端に良い服を着てはいけない、ということ。一つ言われたことは、男は楽だ、と。スーツを着ていって、相手が上着無しなら自分も上着を脱げば良い。ネクタイをしていなければ、自分も許可を得て外せば良い。相手がポロシャツやTシャツなら(あり得る!)、シャツのボタンをはずして腕まくりでもすれば良いと。女性はそのあたりの調節が難しいそうだ。
そのインタビューだが、以外と和やかにすすむ。日本のような圧迫面接みたいなのは、採用担当者が日本人でもなければ、まずない。内容は主に仕事の内容について。実際的な仕事の知識・経験について尋ねられるし、こちらにもかなり長い時間を質問させてくれる。ここでも、面接突破テクニックのような物もあるようだが(「ふるい落としのための質問を察知してはぐらかす方法」などがあるらしい)、私ら中年くらいのキャリアになるとそういう表面的なものでごまかせる物でもない。一番の対策は転職活動を始めるまでの間有意義なキャリアを積んでおくことだろう。
晴れて対面インタビューを突破すれば、割とすぐに採用の連絡が来る。早いところでは数時間、遅くても数日だった。なかなか連絡がないところは断られることが多かった。返事が早い理由はおそらく次のオファーの提示までの期間が長いからだろう。
5のオファーというのは、ようするに採用条件だ。これは前職の給与(普通は転職で上がる)、次の職場、地理的条件、などを元に人事担当者が提示してくるのが普通だ。アメリカらしいと思うのが、真っ先に示してくる条件が健康保険を含めた福祉の条件なところ。このあたり、国民皆保険の日本と違うところだろう。ちなみに、条件の中には引っ越しの補助とともに、転職ボーナス(年収の数パーセント)が含まれるのが普通だ。このオファーがでるまでに結構な時間がかかる。短いところで2週間、長いところでは1月以上。あまりに待たされると、採用すると聞いたのは空耳だったのではないかという気がしてくるほどだ。
そうやって長い期間を待ち、オファーを受け取っても終わりではない。次は条件交渉だ。アメリカではオファーに対して交渉無しでOKを出すことは少ない(というふうにあとから聞きました)。実を言うと私は即OKしようとしたが、周りから止められて交渉した。求める条件が全てが認められるわけではないが、もっともな理由がついていれば認められることも多い。たとえば地域ごとの給与格差がある場合、資料を提示してより高い給与を求める、という手がある。さらに言えば、たまにオファーが間違っている(引っ越しの補助が抜けている等)こともあるので、そのあたりの指摘もしておく必要がある。人によっては複数のオファーを天秤にかけたり、一方を利用してもう一方の給与を吊り上げたりするらしい。
こういった条件交渉が合意に届いて、オファーを受けた時点で転職活動はほぼ終了。この後、身元確認(職歴の確認、労働許可や犯罪履歴などの参照)などがあるが、普通は問題なく終わり、入社手続きへと進んでいく。(身元確認は面接などの段階で行われることもあるようだ)

その他の事

ここまでさらっと書いてきたが、結構大事なのが履歴書だ。ネットをみてまわると上手な履歴書の書き方なんてものあるし、転職コンサルタントにたのめば書き直しもしてくれる。履歴書は自由書式だが、年齢は書かないし、書いてはいけない。写真もいれない。性別もかかない。特技や趣味も普通書かない。書くのは職歴・学歴・技能など仕事に関わることだけだ。志望動機なども履歴書には書かないが、これはカバーレターに書くことができる。手書きで書いてもいいんだろうが、受け取った人はずいぶん変わった人だと思うだろう。ひょっとしたら頭がおかしいと思われるかもしれない。
アメリカの転職でもう一つ重要なのが労働許可だろう。私の場合幸運なことに転職前にグリーンカードを取得していたので問題なかったが、就労ビザで渡米している人はスポンサーの切り替えを行わなくてはならない。それでも日本人はまだ楽な方のようで、中国国籍の人たちはビザの上に輸出コントロールの許可がでないと就労できないという。ちなみに日本人はグリーンカードの申請自体すくないので手続きもすぐ進むため、実は在米日本人エンジニアはこういう面では他の国の出身者よりも有利なんじゃないかという気がする。

最後に

普段日本語で長い文章を書くなんて事はほとんど無いため、行為自体に影響されているのかもしれないが、こうやって転職の経緯をまとめているとやはり日本での転職と米国での転職はずいぶん違うんだなという気がする。自分は転職は初めてとは言え、日本で転職活動を少ししたことがあるのだが(途中で止めた)、その時に比べるとずいぶん気楽に事を進めていたような気がする。その分アメリカは、映画マイレージマイライフで描かれたように解雇が簡単だったり、失業で健康保険が切れてしまう事があったり(自分で入る保険はあるがありえないほど高い)、日本に比べて厳しい面も多い。正直言って、元気なうちはいいが、弱ってきたらちょっと住み続けたくない。とはいえまだまだチャンスの多い国、できれば日本のエンジニアもどんどんやってきてほしいなと、中国人・インド人が多数をしめる同僚達に囲まれつつ日々考えている。

まとめ

米国で転職したので顛末をまとめた。面接たくさんした。交渉しよう。