Moiz's journal

プログラミングやFPGAなどの技術系の趣味に関するブログです

ラズベリーパイ5が届いた

開封と外見

以前注文していたラズベリーパイ5が届いた

ラズベリーパイ5箱の外見

内容物の確認。本体と極簡単な説明書類のみ

同時に買ったヒートシンクをつけてみる

 

OSのインストール

こちらのページからRaspberry Pi Imagerをダウンロードして、Raspberry Pi OSをSDカードに書き込み。以前にくらべても楽になった。*1

www.raspberrypi.com

Raspberry Pi 5では64-bit版が推奨になったようだ

Raspberry Pi5では64-bit版が推奨になったようだ

これをラズベリーパイ5に入れてスイッチ入れて即起動。

 

ラズベリーパイ5起動画面
USB Type-Cで電源をUSBを同時使用

せっかくなのでNexdock 2につないで使いたい。

uzusayuu.hatenadiary.jp

もしかして、と思いUSB端子をそのままNexdock 2に接続してみたが、電源の供給はされるもののキーボードもタッチパッドも認識されない。

検索してみたところ、HWの機能としてはサポートしているが、ソフトウェア側の対応(Bootloader、EEPROM)が遅れているようだ

github.com

そこで、sudo rpi-updateとsudo spi-eeprom-updateを行い、config.txtに以下の行を追加したところ、無事USB Type-Cケーブル一本で電源供給とキーボードの接続両方ができるようになった。

dtoverlay=dwc2,dr_mode=host

Nexdock 2とラズベリーパイ5

できればUSBケーブルでディスプレイも接続できればさらに楽だったのだが、そこは生来に期待。

さてどんな事に使おうかな?

 

*1:ただ、Mac版では途中でエラーがでてすすまなかったので、Windowsでやり直した

FreeBSDをインストールしてみる

長いことUnixを触ってないので、FreeBSDを実機にインストールして触ってみたくなりました。 たんなる作業メモで、特別な知見はありません。

環境

手元に使わなくなったNUC6CAYがあったのでこれを使います。

スペック

項目 内容
CPU Intel Celeron J3455
メモリ 8 GiB (拡張済み、もとは2 GiB)
ストレージ 1 32 GiB eMMC (オンボード)
ストレージ 2 Kingston SATA SSD 120 GiB (あとから追加)

もとはWindows 10が入っていたのですが、さすがにスペック的にきつくなり、使用頻度がさがったものです

モニターとして以前紹介したNexdock2を使用しました。
モニター・バッテリー・キーボード・USBハブ一体型のものです。

FreeBSDのインストール

インストールはFreeBSD公式サイトのガイド通りに行いました。 また、福山大学金子邦彦研究室FreeBSDインストールガイドがとても親切で参考になりました 以下は作業ログです。

インストール時の設定は、基本的にデフォルトで問題ありませんでした。変更したのは以下の部分です

  • ホスト名がよくわからないので適当な名前(NUCとか)を入れた
  • Optional System Componentでパッケージ類をすべて選択
    • この後のダウンロードサイト選択肢にエラーを誘発発生する物があった(理由不明)。インストールをやりなおし、リストのトップのものに変更してインストール成功
  • ディスクのフォーマットとしてZFSを選択し、ZFSのConfigure Option->Pool Type/DisksからStripeを選択し、インストール先SSDを指定
  • WIFIアダプタを選択し1DHCPを使用
  • タイムゾーンとしてPDTを選択(起動後時間がずれていたので、コマンドラインから修正)
  • Serviceの設定、mmoused、powerdを選択
  • ユーザーを追加し、cshを設定(インストール後にbashに替えます)

これでリブートするとログインできるようになっていました

起動後の設定

以下、起動後に行った設定です

ユーザーをsudo可能グループにいれる

# sudo pw group mod wheel -m username 

/usr/local/etc/sudoersの以下の行をアンコメント

# %wheel ALL=(ALL:ALL) ALL

シェルをbashに変更

まずbashをインストール

# sudo pkg install bash

デフォルトシェルをbashに変更

# chsh -s /usr/local/bin/bash username

.profile.bashrcを読み込むように以下の行を追加

if [ -n "$BASH_VERSION" ]; then
    if [ -f "$HOME/.bashrc" ]; then
        . "$HOME/.bashrc"
    if
fi

再起動後bashが使えるようになります。この後.bashrcを変更し自分の好みの環境に変更しました。

GUI環境

FreeBSDインストーラーはGUI環境はインストールしないので、自分で設定します。 以下、作業ログです。

Xorgのインストール

公式サイト2の説明に従いX Window Systemをインストールします

# sudo pkg install xorg
# pw groupmod video -m username

NUC6CAY独特の設定

# sudo pkg install drm-kmod   
# sudo sysrc kld_list+=i915kms
  • 公式ガイドのTipに従い、そのほかのドライバーもインストールしました
# pkg install libva-intel-driver mesa-libs mesa-dri
  • デフォルトではNexdock2のタッチパッドが認識されないので、再起動の前に追加でドライバーをインストール3
# sudo pkg install xf86-input-synaptics

デスクトップの環境のインストール

今回は軽そうなXFCEを選びました
公式ガイドにしたがってインストールし再起動するとXFCEで立ち上がります。

ブラウザのインストール

次のコマンドでChromiumがインストールできます

# sudo pkg install chromium

これでchromechromiumが起動しますが、日本語が文字化けします

日本語フォントの設定

こちらのブログを参考にフォントを設定しました

symfoware.blog.fc2.com

参考にしたブログにならいipaフォントを選択します

# sudo pkg install ja-font-ipa-00303_7

これで、Chromiumで日本語の表示ができるようになります。 タスクバーのアプリケーションタイトルは再起動後日本語表示ができるようになるようです

日本語入力ソフト

こちらのブログを参考にmozcをインストールします

retrotecture.jp

# sudo pkg install ja-fcitx-mozc ja-mozc-server ja-mozc-tool
# sudo pkg install zh-fcitx zh-fcitx-configtool

一度ログアウトしてログインしなおすと、fcitx-config-gtkからmozcが選択できるようになっていました。 これで日本語入力もできます

その他の設定

CPUの周波数設定

初期状態ではCPUクロックが1.5GHz固定だったので、powerdを有効化します

こちらのブログを参考にしました

www.ateamsystems.com

以下の行を/etc/rc.confに追加します

powerd_enable="YES"
powerd_flags="-a hiadaptive"

再起動後、800MHzや1501MHz4といった、1.5GHz以外の周波数も使われるようになります。

SSHの使用

こちらのブログを参考にしました。

ostechnix.com

Ubuntu等と違い、OpenSSHサーバーはFreeBSDの標準インストーラーでデフォルトでインストールされるようです。 SSHDをスタートするには、/etc/rc.conf/に以下の行を追加します

sshd_enable="YES"

再起動後は、自動でSSHDが起動し他のPCからSSH接続ができるようになります。(/etc/rc.d/sshd startで即実行もできるようです)

リモートデスクトップサーバーのインストール

こちらのブログによるとxrdpを使うと簡単なようです5

www.jeremymorgan.com

私の環境はxfceなので、/usr/local/etc/xrdp/startwm.shではexec startxfce4の行をアンコメントしました

まとめ

これでどうにかFreeBSDGUI環境で実行できるようになりました。 ここまでくると普段使っているLinuxと似た感じに使えます

インストールしたFreeBSD。日本語で表示できている。ELFファイルヘッダーのOS/ABIがFreeBSD


  1. どういうわけかNUC6CAYのWi-Fiがとても遅かったので、あとから有線接続に変更しました。
  2. X11関係のインストールは英語ドキュメントの方が詳しいようです
  3. https://chat.openai.com/share/016f3681-376a-45b8-bca2-ec07797b942f
  4. 場所は失念しましたが、どこかの掲示板で+1MHzがTurbo boost 状態をあらわすというコメントをみた記憶があります
  5. 私の環境ではXRDPでログインすると、どういうわけかPATHに/usr/sbinが含まれないので、原因を調べています。

「詳解 3次元点群処理」を読むために環境設定をした

3/5/2023: GPUが認識されていなかったので、修正のため記事の後半に追記を行いました

今回は「詳解 3次元点群処理」という書籍の内容を実行するための環境設定をしようとして大変だった(特に6章)、というゆるい記事です

「詳解 3次元点群処理」を読み始めた

先日日本に一時帰国した際に、昨年発売されて話題になった「詳解 3次元点群処理 Pythonによる基礎アルゴリズムの実装」を購入し読み始めました。
内容的には3次元の点群を解析処理するいろいろな手法を解説するというものです。 処理の多くはライブラリを活用したものですが、いくつかの処理については低レベルか(numpyレベル)からの実装の解説が行われています。

この本の特に特徴的な部分は4章(点群レジストレーション)、5章(点群からの物体認識)、6章(深層学習による3次元点群処理)、での、点群をデータベースからダウンロードして実際の処理を行ってその解説を行っている部分だと思います。しかも、これらの章で扱うPythonコードはすべてgithub公開されており、実行できる環境があれば、すべて読者が実行できるようになっています。  

このように意欲的な書籍で、扱われる内容も非常に興味深いのですが、読者の前には実行環境という壁が立ちはだかります。

まず、この本はあくまで点群処理の本であり、環境設定のような本質的でない部分についてはほとんど述べられていません。  

過去に出版された技術的な書籍でも、環境設定が固定されると、数年後には実行不可能になってしまうことも多々あったので、環境設定は各自やってね、というのはある意味合理的な判断だと思います。

自分も、この書籍にでてくる断片的な情報と、ネット上のいろんな資料を比較して、どうにかこうにか2章から6章の内容が実行できる環境を設定できたので、ここに記録として残して置こうと思います。

ただしこの内容はあくまで自分が試してみた内容というだけで、他の環境でも同様に動作することを保証するものではありませんし、この内容を参考にして環境設定を行った場合に生じるいかなる結果についてもブログの著者は責任を負いません。
むしろ、各自自身の現在の環境にあわせて追加で設定が必要であり、その設定はそれぞれ異なると考えるのが自然です。あくまで「やってみた」という程度の内容であることをご理解ください。

2章から5章までのPythonとOpen3Dのバージョン

「詳解 3次元点群処理」では何箇所か実行環境についての記述があります

まず内表紙の裏にこう書いてあります

  • 本書の執筆にあたって、以下の計算機環境を利用しています.

    Ubuntu 18.04, Python 3.8, Jupyter Notebook 6.4
    Ubuntu 20.04, Python 3.8, Jupyter Notebook 6.4

3ページ目にこうあります

次に,Open3Dをインストールします.(略)次のコマンドを実行しましょう. $ pip install open3d==0.14.1
これにより,本書執筆時点での最新バージョンであるOpen3D 0.14.1がインストールされます.

とあります。

試して見ると、あまりPythonやOpen3Dの細かいバージョンは関係なさそうだったのですが、バージョン違いで動作が違うといやなので、できるだけ合わせておきたいところです。

さて、自分が普段使っているUbuntuは22.04、PythonのバージョンはPython 3.10.6です。この環境で上記のpipコマンドを実行するとエラーがでました。

ERROR: Could not find a version that satisfies the requirement open3d==0.14.1 (from versions: 0.16.0)    
     
ERROR: No matching distribution found for open3d==0.14.1

そこで今回はPythonのバージョンをコントロールするpyenvvenvを使って、バージョンをあわせました。自分はすでにpyenvをインストールしていたのでそちらを使いましたが、インストール方法はこちらなどにあります。

3.8系で最新の3.8.13をインストールしまし、venvで3dpcpという名前の環境をつくり、0.14.1のOpen3Dをインストールします。

$ pyenv install 3.8.13  
$ pyenv local 3.8.13
$ python -m venv ./3dpcp
$ source 3dpcp/bin/activate
$ pip install open3d==0.14.1

今回はエラーもでません。 3ページの記述にしたがってOpen 3Dのバージョンを確認しておきます。

$ python -c "import open3d; print(open3d.__version__)"
0.14.1  

成功したようです。これで、書籍指定の環境でPythonスクリプトやJupyter Notebookの内容を実行できます1

6.1 章の実行環境

6章の環境については、5ページめにこうかかれています。

第6章のサンプルコードは、深層学習PyTorchおよびその拡張ライブラリであるPyTorch Geometricを用います。これらのインストール方法については、第6章を参照してください.

第6章にゆくと最初の数ページ、PyTorchを使った例が示されますがインストール方法については書かれていません。

PyTorchのホームページを見ると、推奨環境ごとにPyTorchのインストール方法は違うようです。

私の環境(CUDA11.7, PIPベースインストール)では次のコマンドでインストールできると表示されました  

$ pip3 install torch torchvision torchaudio

これで6.1深層学習の基礎のサンプルコード(pytorch_practice)は実行できるようになりました。

6.2章の実行環境 (Docker失敗編)

これは失敗の記録なので、とばして次のセクションにすすんでも問題ありません

6.2に進むと新たにPyTorch Geometricというライブラリが必要だとかかれています。

さらに環境についてはこのように書かれています

本書では安定した環境のためDockerによる環境設定を提供していますが、(略)

続いて

Dockerを用いる場合には本書添付のサンプルコードのdocker/secrtion_deep_learning2ディレクトリ以下のサンプルコードおよびDockerfileを利用してください

実際にdocker/section_deep_learningを見てみると次のようなファイルがあります。

docker_build.sh Dockerfile docker_run.sh

とくに実行のマニュアルなどは無いようです。どう使ってよいのかまったくわからないのですが、とりあえずDockerのウェブページなどを見ながらDockerの環境を設定して、実行してみました。

docker_build.shはとりあえず実行できたのですが、docker_run.shはエラーがでて実行できませんでした。

Dockerについてほぼ知らない私にはこれ以上進めることができませんでした。

6.2章の実行環境(Anaconda、とりあえず動作した編)

6.2章を見返すとこのような続きがあります

(略),執筆時点(2022/08/08)での最新のPyTorch GeometricはAnacondaを用いて容易にインストールできます.

更に、

Anacondaを用いる場合には
$ conda install pyg -c pyg
というコマンドにてインストールできます.

とあります。

この本でAnacondaの記述が出てくるのはたぶんこれが初めてなのでとまどいますが、とりあえずAnacondaの環境設定を行います。

まずこれまで使っていたpyenvの環境を抜けます

$ deactivate

自分はたまたまAnacondaの実行環境をインストールしていたのでそれを利用します。そうでなければAnacondaのインストールを行います。

次に環境を作ります。今回は3dpcp_dlという名前にします。過去にインストールしたパッケージとコンフリクトしてそうだったので、--no-default-packageを指定しました。

$ conda create --no-default-package --name 3dpcp_dl

アクティベートします

$ conda activate 3dpcp_dl

追記(3/5/2023)
Cudaのバージョンを確認します3

$ nvcc --version

自分のCudaのバージョンは11.7なので、11.7に対応したPyTorchをインストールします。

PyTorchのインストール方法ページによると、Linux + Conda + Cuda 11.7の組み合わせでPyTorchをインストールするには次のコマンドが必要だそうです。

conda install pytorch torchvision torchaudio pytorch-cuda=11.7 -c pytorch -c nvidia

先程作成した環境(3dpcp_dl)にインストールするために次のコマンドを実行します。

$ conda install -n 3dpcp_dl pytorch torchvision torchaudio pytorch-cuda=11.7 -c pytorch -c nvidia

追記(3/5/2023)終わり

必要なライブラリをインストールします

$ conda install -n 3dpcp_dl jupyter    
$ conda install -n 3dpcp_dl pyg -c pyg    
$ conda install -n 3dpcp_dl tensorboard -c conda-forge    
$ conda install -n 3dpcp_dl -c anaconda h5py

(h5pyは3/5/2023に追加)

さらに、自分の環境ではtorch_sparseでエラーがでたので、インストールしなおしました
まずPyTorchのバージョン確認

$ python -c "import torch; print(torch.__version__)"    
1.12.1  

このバージョンと手元のCudaのバージョンにあわせてtorch_sparseをインストールしなおします(参考)

あくまで私の環境(PyTorch: 1.12.1, Cuda: 11.7)の場合ですが、次のコマンドでtorch_sparseをインストールできました。

pip install torch_sparse -f https://pytorch-geometric.com/whl/torch-1.12.1+cu117.html

また、cuda関連でエラーがでていたので、cuda-toolkitの再インストールも行いました。(参考

これでとりあえず、私は6.2章のコード(modelnet10_classification.ipynb)が実行できるようになりました。

最後に

どうにかこうにか「詳解3次元点群処理」のコードを手元で実行できるようになったので記録がてらブログにしましたが、たまたま動作しているレベルで、一般的な環境とはとてもいえません。
あくまでやってみた、というレベルです。

まだ6章後半、7章の内容の確認はできていないので、もしなにか修正が必要なら内容をアップデートしようと思います。

あと、Dockerについて少し学んで、Dockerを使った環境での実行もできるようしたいなとも思っていますが、こちらはいつになるかわかりません。


  1. ところで、Jupyter Notebookについてですが、最初の環境では言及ありますが、本文では実行方法など記述がありません。5ページではipythonの実行方法が説明されていますが、ipythonについてははこのページ以降記述がありません。ちょっと不思議です。
  2. secrtionはsectionのタイポだと思われます。
  3. Cudaがインストールされていない場合は、まずCudaのインストールページを参照してインストールします。PyTorchは今の所Cuda-11.7までサポートしているようなので、インストールするのは11.6か11.7が良いと思います。自分の環境(Ubuntu 22.04| + GTX2080Ti)では、deb(network)でCuda-11.7がインストールができました。(deb(local)では失敗)。

Digital Design and Computer Architecture - RISC-V Edition を読んだ

Digital Design and Computer Architecture - RISC-V Edition を読んだ

タイトル通りです。2nd Editionは長いことパラパラ眺めただけの積ん読状態だったのですが、RISC-V版がでた機会に、年末年始休みに読み始め、やっと読み終わりました。

f:id:uzusayuu:20220220170939j:plain
Digital Design and Computer Architecture 2nd/RISC-V Edition

2nd Editionとの違い

まず気がつくことは、2nd Editionに比べて薄くなっていることです。この辺り紙質の違いもあるのでしょうが、2nd Editionの最後のページが690ページなのに対して、RISC-V Editionは564ページです。
これは、2nd Editionで付録だったDigital System ImplementaitonとC Programming、更に、8 Memory and I/O SystemsのI/O部分が、オンラインでダウンロードできるPDF形式に代わり本誌から除かれためで、残りの部分のボリュームはあまり変わってないようです。

この版のメインの変更点であるRISC-Vの採用ですが、大きな変化があるのはChapter 6 ArchitectureとChapter 7 Microarchitectureです。この2章は対象命令アーキテクチャRISC-Vに変更して書き換えられています。 またダウンロード版PDFのChapter 9 Embedded I/O Systemでも、RED-VというRISC-Vを使ったボードを使った説明を行っています(2ndではMIPSが載ったPIC32MX675F512Hを使用) 。 逆に言うとそれ以外の章はあまり大きな変更はないようです。

ちょっと気になったのが、Chapter 9 Memory Systemsで、仮想アドレスの変換を説明する際の例がMIPSだった事です(522ページ)。このあたり、版を重ねていくうちに直って行くのでしょうか。

もう一点、私の手元にある2nd Editionとの違いだとして、RISC-V Editionの方は一部青い印刷を使って色分けしていて、読みやすくなっています。(このあたり、私の手元の2nd Editionがたまたまモノクロ版なだけかもしれませんが。)

本全体の感想

本自体の感想としては、デジタルデザインの原理から、回路、HDLの解説に、命令アーキテクチャ、マイクロアーキテクチャ、メモリーシステムと、一通り丁寧に説明されていて、このあたりをまとめて学ぶにはとても良い本だと思いました。 もちろんこの本一冊で、こういった分野の全ての内容について触れるのは不可能ですが、初めてこういう分野を学ぶ人には次に進む良い準備になると思います。 あれがない、これがない、というのは簡単ですが、この本のトピックの取捨選択はうまく最小必要なトピックを集めているように感じました。

学生の頃にまず最初に読んでいたら、その後の学習効率が大分あがっただろうと思われてなりません。 そして、今の自分としては短時間にいろんなトピックがおさらいできて楽しく読書できました。時間があったら練習問題もやってみようかなと思っています。

ところで、今(2022年2月)アメリカで購入する場合、Elsevierのサイトで購入すると書籍とPDFのセットがお得なようです。知らずにアマゾンで購入してしまい、本棚のスペース節約のためにPDF版を別に買うか迷っています。

アメリカでがん治療をうける

はじめに

今年の前半、初期の大腸がん(直腸がん)になり直腸の一部摘出手術を受けた。
幸いなことに一回の手術で治療は終了し、今はほぼ通常の生活にもどっているが、自分にとっては生き方を見直す契機になる大きな出来事だった。

病気になってから調べたのだが、大腸がんの治療自体は日本でもアメリカでも大きな差はないようだ。しかし、アメリカの医療というと日本人にとってはどうしても高額、理不尽な保険制度、などといったイメージがあると思うし、アメリカでがん治療を受けたと聞けばいったいいくらかかるのか、と疑問に思う方も多いと思う。
このエントリーではそういった点についてまとめてみようと思う。

なおこのブログエントリーはあくまで私個人の経験についてまとめたもので、アメリカのがん治療の全体像を反映するものではありません。またブログオーナーは単なる患者であり、医療については素人なので、内容の正確性については保証できかねます。

がん治療の費用

がん治療および検査にかかった費用のうち大きなものを表にしてみた。

内容

請求額 保険会社が認めた額 自己負担額 説明
内視鏡検査
(病院)
 $ 2,833 $462 $0 予防的処置なので保険100%適用
内視鏡検査
(施設)
$19,800 $1,487 $0 内視鏡検査の請求はなぜかドクターの病院と、検査施設(内視鏡専用の施設らしい)との2通にわかれていた。こちらも予防的処置なので保険100%適用
病理検査 $2,105 $1,473 $1,473 内視鏡検査後の病理検査
再検査
(病院)
$2,700 $341 $341 超音波検査
再検査
(施設)
$17,363 $10,662 $2,564 このあたりで免責額に届いたらしく、自己負担の割合が減った
再検査
(麻酔)
$2,241 $719 $72 麻酔費用は別に請求された
CT検査 $968 $489 $49  
MRI検査 $16,668 $9,027 $0 自己負担額の上限に届いたらしく、自己負担額が$0になった
事前検査 $3,205 $1,852 $0 手術前の検査
手術前検査 $1,885 $1,124 $0 当日の検査
病院の費用 $156,728 $36,816 $0 病院や病室の費用。個室に4日間いた。
手術 $10,419 $7,315 $0 腹腔鏡手術による直腸がん切除
麻酔 $2,048 $792 $0  
総額 $271,829 $90,774 $5,203 診察、薬など、この表に含まれない費用を含んだ額

 

追記:再検査の際、可能であれば腫瘍を取り除く処置を行う予定だったので、費用がかさんだのだと思われる。

こうしてみると、請求額、保険会社認めた額(実際に医療機関に支払われる額)、自己負担の乖離が大きい。

まず請求額は基本的に医療機関の言い値で、病院ごとに請求額は大きく異る。例えば「日米がん格差 「医療の質」と「コスト」の経済学 (アキよしかわ)」には病院ごとの費用のばらつきが例示されている。今回私が手術を受けたのは割と値段の張る病院だったようだ。

 次に、医療機関が主張する金額を、保険会社が交渉して適正な額に補正する。ただし、保険会社が認める額もあくまで交渉の結果であり、同じ医療行為だとしても必ずしも同じ金額にはならないようだ。このあたり、日本の保険点数制度の明朗会計に慣れた身としては未だにうまくなじめない。

次に自己負担額が高かったり低かったりするのは、私の入っているHDHP(High Deductible Health Plan - 高免責医療プランとでも訳すのだろうか)というプランの性質による。このプランでは、ある一定額までは医療費は患者の全額自己負担となる。この額を超えると大部分(私の場合90%)が保険で賄われ、さらに自己負担上限に達すると全額保険で支払われる。そんなわけで治療の初期には全額自己負担になり、後半では自己負担はゼロになる。HDHPではさらに免税で医療費をある程度の額まで支払う仕組み(HSA)もあり、実際の負担感はさらに上の表から感じられるものより低い。

追記:医療費は高いが代わりに(?)サービス面は非常に高かった。病室はトイレ・シャワー付きの完全個室の部屋(写真)で壁掛けテレビとiPadがついていた。

f:id:uzusayuu:20210421162639j:plain

広々とした病室(個室)からの眺め

食事はルームサービスで好きなときに好きなものを注文できる(ただし状況により食べて良いものは指導される)。 

f:id:uzusayuu:20210423124726j:plain

病室のルームサービスで頼んだ料理。あまり食べられなかった。

治療について

最初にも書いたとおり、私の場合初期に発見されたために一度の手術で治療を終える事ができた。もしステージが進んでいれば他の治療も受けることになり、身体的な負担は大きく増えただろうし、上記の治療費用も遥かに大きなものになっただろう。

追記:4日で退院したのは予想していたこととはいえ大変だった。帰ってもずっと横になっていて家族にたよりきりだった。一人暮らしだったらどうなっていたかと思うとぞっとする。

治療自体は日本語で読んだ本などと比べる限り、日本で受けるものと大きく差は無いようだ。(ただ本職のお医者さんに聞いたところ、素人にはわかりにくいような違いはあるようだ。)このあたり、大腸がんの治療は標準化がすすんでいる、という面もあるのかもしれないし、私の状況が初期だったから、という面もあるのかも知れない。

日本語でがん治療についてしらべる際に読んだ本は次のようなものだ。

 

 標準治療を強くすすめる本。また、治療以外にどのような検査で有用性が認められているかも解説されている。この本によると大腸癌はがん検診が推奨されるがんの一つで、特に便潜血検査は有用だということだ。

 

 

 こちらはちょっと古いが、わかりやすかった。2019年版の医師用のガイドラインも手に入れて読んでみたが、そちらは当然ながらやはり専門家向けで、よく理解できなかった。

 

 

 こちらも一般向けの標準治療解説。患者向けガイドラインと合わせて読んだ。こちらの方が少し新しいようだ。

治療自体以外の状況については次のような本を読んだ。

 

 

 これは本文中でも引用したが、ご自身が大腸癌患者となり日米で治療をうけた医療経済学者のアキよしかわ氏がご自身の経験と日米のがん治療の違いをまとめたもの。がん治療の費用は症状や治療法、またアメリカでは医療機関により大きく異なるので、そのような点に関してくわしく知りたい方はこちらの本を参照されることをおすすめする。

患者からみたがん治療については次の2つのまんがを読んだ。

 

 まんが家のひるなま氏が、ご自身の大腸癌の発見から治療までを描かれたまんが。この本の存在を知ったのは手術後だが、いろいろ共感する面も多く、自宅療養中に3回位読んだ。

 

 内田春菊氏ご自身の直腸がんの体験をつづったまんが。検査のようすや、手術後の様子など、私のケースと似ている面が多かった。

 まとめ

 自分は初期の段階でがんが発見されたため、比較的短い期間に治療を終わらせ日常にもどることができた。「最高のがん治療」にもあるとおり、大腸癌は早期発見により治療可能ながんの一つであり、便潜血などの検査が有効なようだ。私のがんも便潜血検査で発見されたのだが、自分が治療を終える頃にちょうどアメリカで便潜血検査の推奨年齢を引き下げるというニュースがあった。もしこの推奨年齢引き下げが早く行われていれば、自分のがんも更に早期に見つかり内視鏡手術ですんだのかもしれないと思うと、なるべく多くの人に検査を受けてほしいという思いが強くなる。